留学先:Friedrich-Alexander Universität Erlangen-Nürnberg,ドイツ, バイエルン州ニュルンベルグ
研究室:N - squared Lab. (PI:Alessandro Del Vecchio, PhD)
留学期間:22023年1月1日〜2023年2月28日
留学資金源:埼玉発世界行き奨学金 浦和競馬チャレンジ奨学金 短期コース (50万円)
私は,2023年1月1日からの2ヶ月間,Friedrich-Alexander Universität Erlangen-NürnbergのDepartment Artificial Intelligence in Biomedical EngineeringにあるN-squared Labに留学しました.
私が留学していた研究室では,主にヒューマン/マシンインターフェイスおよび神経生理学的研究を行っており,主な研究内容は高密度表面筋電図を用いて上肢(主に前腕)の対象筋における運動単位の活動に焦点を当て,神経活動を抽出することで,AIや高度な解析を行い,中枢神経系の制御を探索することや手・手指関節の巧緻動作を神経信号より動作を再現することを目的としています.この解析結果を用いることによって中枢神経系の疾患を有する患者に対する神経筋装具用のAIの開発や人工知能装具による手の機能回復に応用でき,これらをよりリハビリテーションや臨床領域にも利用できるよう基礎データの提供に向け研究を行っています.国分研究室では,生体力学やヒトの運動制御・発達における神経筋活動の変化に着目しており,2023年度よりN-squared Labで使用していた高密度表面筋電図を本学にも導入する予定であったため,まず機器の使用方法から運動単位データの抽出・解析方法,出力データの解析方法など筋電図に関する基礎から応用的知識を学ぶため留学を行いました.特にN - squaredのPIであるProf. Alessandro Del Vecchioは神経生理学分野における運動単位研究を先駆的に行っている研究者であり,研究内容もリハビリテーションと非常に近しいものがあったため,我々と親和性が高く,留学先に適していると考え留学を決めました.
留学当初は,高度な解析を使用した研究に対して難しい印象を受けましたが,研究者の中でも皆が機械学習などの高度な解析ができるわけではなく,個々の役割が決まっており,一つの研究を完成させるために多くの研究者・研究室が協力して進めていました.また研究内容によっては,計測機器がないことや解析ができない場合もあり,その際は他の研究室と協力して,一つの大きなプロジェクトとして実行することもあり,その行動力や団結力においては日本の研究室よりも効率と質を重視した,研究システムであると感じました.また現在私の所属している研究室よりも大学院生や研究員(計18名)が多くいるため,研究が止まった際は上級生がメンターとなり,即座に対処できる体制が整っていました.そのため私も解析の勉強をしている際には,メンターである学生と相談をしながら機器の使用方法から解析方法について学ぶことができました.今回の短期の機械を生かして共同研究を行い,国際的シェアのある研究ができるよう頑張りたいと思います.
今回滞在したエアランゲンという都市は,大学都市でもあり,多くの学生が生活する街でした.そのため治安は非常によく,公園やカフェなども多くあり生活しやすい環境でした.また電車(新幹線)やバスなどの公共交通機関が整っているため,隣町などに観光に行く際は,主に電車を利用することで多くの観光地に行くことができました.近くにはドイツでも最も美しい街と言われている“バンベルク”や中世から続く伝統的な都市“ニュルンベルク”があり,一度では周りきれない程の施設や観光地があるので観光には困らないと思います.しかしドイツには宗教上の理由から,日曜日に小売店や飲食店を閉めなければいけない閉店法があるため生活する際は注意が必要です.
今回の留学は2ヶ月と非常に短期のものでしたが,多くの経験をさせてもらい,技術だけでなく研究の取り組み方なども学ぶことができました.母国語が英語でない国で,稚拙な英語しか話せない日本人1人の海外生活は不安もありましたが,恥をかく以上に価値ある経験をすることのできた機会であったと思います.次回は言語能力を向上させ,共同研究が行える程度の長期留学を行えたらと思います.