
留学先:St. Michael's Hospital, Keenan Research Centre,カナダ,オンタリオ州,トロント
研究室:Laboratory of Tissue Repair and Regeneration (PI:Boris Hinz, PhD)
留学期間:2025年1月23日~2025年3月18日
留学資金源:埼玉発世界行き 浦和競馬チャレンジ短期コース(50万円)
私は,2025年1月23日からの約2ヶ月間, St. Michael's Hospital, Keenan Research CentreにあるLaboratory of Tissue Repair and Regeneration (LTRR)に留学しました.
LTRRでは細胞生物学やメカノバイオロジー分野の研究を行っており,特に「線維化」という現象に焦点を当てています.最も身近な例を挙げると,擦り傷や切り傷が治った後にその部位の皮膚が縮こまったり硬くなったりする現象です.線維化は長期の喫煙などで引き起こされる肺線維症でも見られ,近年の生命科学・医学研究における重要なトピックスの1つとなっています.線維症の原因となるのは「線維芽細胞」という細胞であり,国分研究室での大きな研究テーマの一つである腱・靭帯にも線維芽細胞が存在しています.一般的にほとんどの細胞は,周囲の硬さに応じてその挙動を変化させますが,LTRRでは硬さの調節が可能なシリコンの上で細胞を培養することで,硬さによる細胞挙動変化に関する研究を可能にしています.腱・靭帯のメカノバイオロジー解明のためには,細胞レベルでの挙動を観察することは必要不可欠なため,この腱の細胞でも硬さによる挙動の変化を研究すべく,今回のLTRRへの留学が決まりました.
LTRRでは私が留学するまで,腱細胞を扱ったことがなかったため,はじめに自分が日本の研究室で行っているプロトコルをLTRRで可能な方法に調整しました.細胞を培養している期間は培養シリコンの作成方法を詳細にご教授いただきました.帰国後すぐに実施していた研究を国分研究室で再現できるように,製品のカタログ番号からトラブルシューティングまで,必要な情報の多くを得ることができたと感じています.さらに,細胞をメインで扱う研究室ならではの実験サイクルの速さというものも体感することができました.そのおかげもあり,帰国前には 最適なシリコン基材上での腱細胞培養条件を見つけることができました.
一方,その中で大きな壁となったのはやはり英語でのコミュニケーションです.カナダ・トロントに多くの民族的多様性があるように研究室内のメンバーもドイツ,中国,韓国,イランなど様々なバックグラウンドを持っていました.この多様性は英語のアクセントに如実に現れ,自分のリスニング能力の低さから,会話の内容が全く聞き取れないこともあり,多様な英語による緩和に参加することへの難しさを痛感しました.さらに,留学前には日常会話まではなんとかできるレベルになっていましたが,研究の場においてはより詳細な内容の会話が求められるため,自分の伝えたいことがなかなか伝わらない場面が多くありました.今回初めて海外において一人で生活し,海外の一流ラボで研究した経験は,自身の研究の可能性を再確認するとともに,将来の自身のキャリアを考える上で,多くの示唆を得ることができたと感じています.

