
留学先:Washington University in St.Louis,アメリカ・ミズーリ州
研究室:Spencer Lab (PI: Spencer Lake, PhD)
留学期間:2024年5月19日〜2024年9月23日
留学資金源:日本学術振興会 若手研究者海外挑戦プログラム (140万円)
私は,2024年5月19日からの約4ヶ月間, Department of Mechanical Engineering and Materials Science, Washington University in St. LouisにあるSpencer Lake Lab.に留学しました.
Lake Lab.は(当時)Lab Manager 1人,Ph.D. student 3人,Undergrad student 5人,計9人の研究室です.メンバーの専攻は,Mechanical Engineering and Materials ScienceとBiomedical Engineeringの2つが主であり,工学分野に背景を持った研究者が多く所属しています.主な研究内容としては,生体力学試験や偏光イメージングを用いて腱や靱帯の力学的特性や構造特性の解明を行っています.また,実験動物モデルを用いて肘関節の拘縮モデルを作成し,拘縮のメカニズム解明や運動効果の検証を行っています.国分研究室では,「腱板断裂術後の治癒過程におけるリハビリテーションの効果の解明」を自身の研究テーマとしており,Lake Lab.おいてEngineering技術を駆使して確立された実験動物への運動介入手法や腱の解析手法を自身の研究に応用したいと考え,国分先生ご紹介のもと現地へ渡航しての共同研究の実施が決定しました.
腱板再建術後の治癒過程においては,メカニカルストレスが必要であることは明らかとされてきたものの,その強度や頻度,種類など介入の詳細は不明という課題がのこされておりました.自身の研究では,その中でも運動の種類という点に着目しており,現行のリハビリテーションで一般に行われる他動運動システムの構築を目指していました.システムについては先行研究での報告はあるものの,本学は医療系の単科大学であるためシステム構築に時間を要していました.そこでEngineeringの背景を持つLake Labとの共同研究により,新たな介入手法の確立を目指しました.結果として今回の留学期間中に,実際に他動運動システムの構築が完了し,運動介入実験を実施することができました.また,これまで我々の研究室で行ってきた強度を計測する生体力学試験についても,様々な実験を経験することでより深い知識を得ることができ,最終的には当初の目的であった偏光イメージングを用いたコラーゲン線維の解析も進めることができました.


研究対象組織は近くとも,専門の異なる研究室で数ヶ月共同研究を行うことができ,新たな視点で自身の研究を俯瞰して考えることができたとともに,我々の研究室の強みも発見できました.国分研究室はリハビリテーションを背景に,Lake Labは工学を背景に筋骨格系組織の基礎研究を行っています.実験や解析の手法といった技術・知識面を学ぶだけでなく,滞在中は何度か研究室でのプレゼンテーションの機会もいただいたため,プレゼンテーションに対する質問の角度の違いや考え方の違いを実感しました.自身の研究を遂行していく上で研究室のメンバーに多く助けを得た一方で,実験を進めていくうちにLake Labの実験系に応用可能であることが分かり,手法を伝えることができ,異分野や他研究室と交流することの重要性を改めて感じました.今回学んだ新たな視点を持って今後も研究を継続していき,学会などの他研究者と交流できる機会では積極的に意見交換をしながら研究を発展させていきたいと考えています.


今回滞在したミズーリ州セントルイスは,一部のエリアは治安の良くない地域とされていますが,今回の滞在中は特に問題なく過ごすことができました.大学の近くには広大な公園があり,動物園,美術館,科学館が無料で利用できます.イベントも定期的に行われており,研究室のメンバーとミュージカルに行く機会もありました.また,MLBのセントルイス・カージナルスの本拠地であるブッシュスタジアムまでも電車で行けます.生活面では,坂が多く移動は大変ですが,スーパーは自転車か電車を利用すれば利用できる範囲にあり慣れれば困ることはありませんでした. 冬は積雪が多い地域ですが,夏は天気が良くBBQやクロッケーをする機会も多くあり短い期間ではありましたが,オンもオフも非常に楽しく過ごすことができました.