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留学先:Washington University in St. Louis,アメリカ,ミズーリ州セントルイス

 

研究室:Lake Lab (PI:Spencer Lake, PhD)

 

留学期間:2022年9月1日〜2022年10月1日

 

留学資金源:埼玉発世界行き奨学金 浦和競馬チャレンジ奨学金 短期コース (50万円)

 

 私は,2022年9月1日からの1ヶ月間,Washington University in St Louis (WashU) のMckelvey School of EngineeringにあるLake Labに留学しました.

 

 Lake Labは,12人程度のメンバー (Staff:1人,Grad student:4人,Undergrad student:7人)のアメリカでは中規模の研究室です.主な研究内容は ,生体力学試験や偏光光学イメージング等を用いることで,体内の腱や靭帯などの軟部組織の力学的強度や細胞外マトリックス特性,組織中の微細構造等を解析しています.また,特に上肢 (肘関節) の腱・靭帯に焦点をあて,ラットなどの動物モデルを用いて脱臼などの外傷後の靭帯に対する理学療法の効果や靭帯の治癒過程を力学的に解明し,臨床における治療ガイドラインを決定するための基礎的データを提供することを目的としています.国分研究室では,前十字靭帯 (ACL) 損傷後の保存的治癒過程に着目しており,私の研究テーマである「自己治癒過程の前十字靭帯に対する適切なリハビリテーションプログラムの解明」と非常に親和性が高く,国分先生の紹介のもと留学地として決定しました.実際にLake Labに参加する中で,靭帯の強度や疲労性,stiffnessなどの力学的特性の計測に関しては, Engineeringにバックグラウンドを持つLake Labのメンバーは我々と比較して遥かに精通していると感じました.計測方法だけでなく出力されたデータの解析過程や各データの意義など力学的解析方法について学ぶことで,理解を深めることができました.加えて,Lake Labで独自に開発したQuantitative Polarized Light Imaging (QPLI) は,腱・靭帯中のコラーゲン線維の配向や角度を静的・動的に計測できる光学イメージングで,靭帯の成熟度を計測する手法として非常に有益なデータを計測できることがわかりました.我々が従来用いている組織学的な手法と比較して,Ex vivoでの計測が可能であるため,よりダイナミックに靭帯中の細胞外マトリックスの特性を評価することができ,この手法を我々の研究室でも導入したいと考えています.また,基本的に全てのデータ解析はMATLABを駆使して,システマティックに構築されており,ここでもEngineeringの強みを感じました.それだけでなく,WashUはアメリカでも有数の教育・研究機関で,数々のノーベル賞受賞者を輩出しています.そのためEngineering以外にもMedicalやBiologyなどの他分野にも一流の研究室が揃っており,それらの研究室とも容易に共同研究を行うことができます.Lake Labでも,実際に電子顕微鏡の利用や組織切片の作成依頼等を行っており,大学のスケールの大きさを感じました.Lake Labでは,マウスACLを用いた実験はほとんど行われていませんでしたが,実際にマウスACLを用いてこれらの実験を行い,実験プロトコールの確立まで至ることができました.私の実験デザインにおいては,治癒過程のACLにおける力学的強度や組織特性は最も重要なデータとなります.そのため,一部の解析手法を我々の研究室に導入するとともに,今回の短期滞在の縁を生かして国際共同研究を行い,よりインパクトのある研究をできるよう頑張りたいと思います.

 今回滞在したミズーリ州セントルイスは,MLBのセントルイス・カージナルスが本拠地を置く街で,熱狂的なファンが非常に多く,街を歩けばカージナルスの帽子やユニフォームを着た人たちを見かけ,野球に熱い街でした.もちろん,ホームゲームの日になると電車はカージナルスの赤いシャツを着た人たちで埋め尽くされます.実際に私も本拠地のブッシュスタジアムで観戦することができ,初めての野球観戦でしたが,非常に熱いゲームでとても興奮したのを覚えています.また,野球観戦以外にも大学の近くにはNYのセントラルパークよりも広い公園があり,無料で入れる美術館や動物園,科学館などがあるほか,ダウンタウンの方にはセントルイスのシンボルとなっているゲートウェイアーチなどがあり,休日の観光には困りませんでした.ただ,公共交通機関はあまり発達しておらず,完全に車社会となっているため,セントルイスを訪れる際はレンタカーを借りるか,Uberなどのタクシーアプリを利用するのが良さそうです.治安はあまり良くないとされていますが,日中に外を出歩く分には大きな問題はなく,外を歩いていると挨拶をしてくれる人も多く,暖かい街だと感じました.物価はアメリカでは低い方とされているようですが,今回の滞在は円安の影響をかなり受けたため,生活費が想定よりもかかってしまい,その点だけが今回の留学で問題となった点でした.しかし,総じて充実した1ヶ月間を過ごすことができました.

​  今回は1ヶ月間と短期の滞在でしたが,研究室で多くの学びを得ることができただけでなく,初めて1人で海外で生活したことで,とても自信を持つことができました.また,拙い英語ながらもアメリカで生活できた経験は,今後のキャリアを考えていく上でも視野を広げることにつながり,非常に有益な体験となりました.とても楽しく充実した1ヶ月間を過ごすことができ,次回は共同研究者としてもう一度訪れたいです.

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